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シングルレングスアイアンの旅〜第9話「道具の抱える矛盾」

2019.10.09

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構成・文/大庭 可南太 

1974年生まれ。40歳を過ぎて突如ゴルフにハマり、米国の伝説のゴルフ理論書と言われる「The Golfing Machine」を日本で初めて翻訳。

はてなブログ「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」の他、「PCM」でも「人はゴルフをする機械になるか」を連載中。

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新サイト「大庭可南太の『ゴルフをする機械』におれはなる!」 https://www.golfmechanism.com

ゴルフの道具の抱える矛盾

 前回の記事では、ゴルフの道具の長さにやたらに種類が多いのは「メーカーの都合」という独断の結論を下したが、ではシングルレングスアイアンではその問題を解決できるというのは本当なのだろうか。イーデルゴルフのホームページを見るとこのようなバナーが目に入る。

http://edelgolfjapan.com/singlelength-iron.htm

 確かに何となくアイアンの長さが同一というのは「シンプル」な気がしないでもない。では、通常のレングスフローアイアンでは、何が「シンプルではない」のだろう。今回はその点について具体的な考察をしたい。

 そもそもゴルフの道具というのは、根本的な矛盾を抱えていると私は思っている。これまでの記事で議論したように、ゴルフは飛距離や弾道の高低、スピン量などを打ち分けるための試行錯誤を重ねた結果、現在の道具に近づいてきたと考えられる。言い換えれば、道具の種類が多いのは、プレイヤー側が打ち方を変えなくても、つまり同じようにスイングしても異なる結果が得られるという目的のためであると言える。

 しかし我々は本当に様々なクラブを「同じように」使っているのだろうか。答えは「No」である。極端な話、ドライバーのティーショットとウェッジの100yを同じように打っているプレイヤーは存在しないと思うのだ。

https://www.cobragolf.com/king-f7-one-length-iron-set

より出典

 上の写真は、イーデルと同じく単一長アイアンを販売しているコブラゴルフのホームページに掲載されているものである。この写真で気づくことは、当たり前の話なのだが、ゴルフクラブは長くなるほどスイングプレーンがシャローになり、短くなるほどその逆の現象が発生する。デシャンボーはアイアンの長さを統一しているので、常に同じポスチャー、同じプレーンでスイング出来るが、レングスフローのクラブを使っている選手はどうしているのだろうか。上の写真から考えるに、トップの位置を変えるか、ポスチャー、より具体的には前傾角度を変えるしかない。またクラブが長くなることでシャフトプレーンがシャローになるということは、横振りの要素が増えるということであり、横方向の遠心力に対応出来る姿勢を取ることが必要になる。結果として現実的には(程度の差はあるかもしれないが)プレイヤーはクラブの長さに対応する前傾角を「都度調整して」スイングしているのだ。そしてその種類はクラブの長さの種類だけ存在し、されにライの状況に合わせて調整を行えばほぼ無限の種類のポスチャーが必要になるのである。

 それが「ゴルフというスポーツの難しさだ」と言ってしまえばそうなのだが、残念なことは「道具の長さの種類がたくさんある」ことが、その難しさを「低減する」のではなく逆に「増幅させている」可能性があることだ。

ゴルファーが「見るべき」もの

 「そうは言ってもどうせスイングプレーンなんて本人からは見えないのだから、ある程度の技術や経験と、あとは素振りとかでどうにかするしかない」という意見もあるだろう。現実的にはほとんどのゴルファーがそうしていると思う。しかし「ザ・ゴルフィングマシーン(以下TGM)」では、あるものを「見ろ、見ろ、見ろ」と言っている。ボールではない。ボールは「後方内側の四分球に目線をセットする」と言っている。つまりカメラはこの意識で「セット」されている。では何をそのカメラで「撮影する」のか。

 TGMでは、方向性とアタックアングルの管理を正確に行えることが実際のプレーでは必須であるとしている。そのために普段の練習から「見る」意識が必要だと言っているのは、スイング中、特にインパクト前後における「クラブヘッドの残像」である。

 実はこの残像をしっかりと確認するためには、ポスチャーの安定と、充分にインパクトを過ぎるまでボール方向に起き上がらないための長いフォロースルーが必要になるのだが、TGMではこのゾーンを「見る」ことで方向性とアタックアングルの確認が出来るとしている。

 ヘッドの残像が、このゾーンを長く目標方向に伸びていれば、それはアタックアングルもシャローであることを意味する。この練習を行う事で「もはやボールを目で追う必要はなくなる」としているのは、アタックアングルでボールの高さもほぼ決定するからである。

 上記はTGMにおける技術論であるが、このメソッドに道具の長さが異なるという現実を重ねるとどうなるか。

 クラブは長くなるほどスイングアークも大きくなり、アタックアングルもシャローになるという単純な話では済まず、同じ目標方向に打ちたいとした場合、ヘッドの入れ方はおそらく上記の図のように変化せざるを得ないのだ。

 デシャンボーはTGMをベースにゴルフを構築したと言っているが、おそらく彼が単一長のアイアンが有利と考えたのは、上記のTGMの手法がきっかけになっていると私は見ている。彼のセッティングは現在ウッドが三本、アイアンが10本(単一長)にパターが一本だが、彼の飛距離からすれば二打目でウッドを使用する必要はほぼないので、1ホールで使用するプレーンは二つしかないことになる。つまり管理するヘッド軌道の種類も二種類でよいことになる。このことが再現性および精神面で、ツアーを戦う中で有利であると考えているのだろう。

 以上が私の考える「シングルレングスアイアンでゴルフがシンプルになる」(TGM観点からの)理由である。シンプルにしようとし過ぎて複雑化しているという向きもあるが、「感覚」「経験」で全てを解決しようすることに違和感を覚えるタイプには向いているのかも知れない。

 次回以降は、これまでに考察してきた要素を踏まえ、イーデルのシングルレングスアイアンが、本当に優位性を発揮すべきスペックになっているのかを検証していきたい。

《お知らせ》これまで三年間にわたり「はてなブログ」で「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」というブログを書いてきましたが、内容があっちこっちに飛び火することにブログの構造が耐えられなくなり、新たにニュースサイト風に「大庭可南太の『ゴルフをする機械』におれはなる!」というものを立ち上げました。URLは変わっていません。そちらもご訪問いただけると幸いです。https://www.golfmechanism.com

シングルレングスアイアンの旅【バックナンバー】

第1話https://bit.ly/2XB6qeF

第2話https://bit.ly/2FCSUx0

第3話https://bit.ly/32bvjNt

第4話https://bit.ly/30qCNe2

第5話https://bit.ly/2JHD2Mf

第6話https://bit.ly/2ZkVSOp

第7話https://bit.ly/2lXpMK2

第8話https://bit.ly/2kN9nYl

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